ひさしぶりに文章を書きたくなったので感想文

最近テレビで湊かなえの「母性」が映画化されたということで、CMや番宣を見るようになった。

普段あまり読書をしない私だけど、湊かなえは好きな作家と言ってもいいと思う。

ところで私はハードカバーが苦手で文庫になってから購入したいタイプだ。

文庫の方が値段も安いし、コンパクトで通勤に読むにも手軽だからだ。

単行本が出ればすぐに買う、というほど大ファンではないけれど文庫化されているのを見かけたら買うようにしている作家さんなのだ。

とはいえ、普段読書をしない私なので湊かなえ以外にそういう作家がいるかといえばいないので、やはり私にとって好きな作家なのだと思う。

 

私が「母性」を読んだのはいつだったのだろう。

そう思って発行年を後ろの頁で確認してみたら平成27年だった。思っていたより昔で驚いた。

「母性」といえば、この一文。

愛能う限り、娘を大切に育ててきました

どんな話だったかな…と、正直最初に番宣を見た時には思ったけれど、この一文が出てきた瞬間にスッと内容が思い出せた。

それくらい印象的な言葉だった。

そうしたら急に読み直したい気持ちに駆られて2日間かけてもう一度読んだ。

 

湊かなえの作品に出てくる人間は基本的に嫌な部分がよく描かれていて気持ち悪いと感じる。

完璧な善人など世の中にはいないのだから、それが逆にリアリティがあって好きなのかもしれない。

「母性」もやはりどいつもこいつも仕様のない人間ばかりだなと思わされることが多い。

 

基本的に私は主人公に対して感情移入しやすいタイプだけど母親、娘…どちらにも共感しづらいと思った。

母親に対しての方が嫌悪感が強かったかな。

映画のトレーラーを見ていると空気の読めない娘として描かれているけど、空気読めないと言われるのは可哀想な気がした。

私は子供がいないし、娘の立場しか経験していない。

そんな私からすればこの母親の考えや行動は「母親なのに…」と思ってしまう。

母親でないが故の母親というものに対する理想があるからかもしれない。逆に子供だから仕方ないという甘えもあるのかも。

自分が母親になった時にまた見方が変わったりするんだろうか。

 

湊かなえ得意の異なる視点から描かれていくスタイル。

母親の視点と娘の視点。どちらも同じ出来事なのにお互いの想いや受け止め方が違っている。

どちらが本当でどちらが嘘なのか。

まあ、お互いからすればどっちも本当のことなんだろう。

私自身母と喧嘩することがあるが、私は良かれと思って言った言葉を母親は皮肉と受け取っていたりする。

同じように生活していても別の人間だから受け止め方は親子でも同じとは限らない。

私の偏見だけれど、女性は特に主観的な生き物だと思う。

だからお互いの独白は決して事実を歪めようとして嘘をついているわけではなくて、本人にとってはそれが事実なのだ。

その様がまさに女って感じがしてリアルだと思う。

 

ところで、映画「母性」のキャスティングが私には違和感がある。

戸田恵梨香ライアーゲームやBOSSにどハマりした私にとって好きな女優さんの1人。

永野芽郁も可愛いけど…あれ?この2人ドラマ「ハコヅメ」で先輩後輩の間柄だったではないか。

この短いスパンで親子役で再共演は見る側としてはかなり違和感。

というかそもそも戸田恵梨香って母親役させられるの?!とか思ってしまうのは世代的な問題でしょうか。

私の中で母親はもっとふんわりしたイメージがあった。

外から見ればふんわりしていておやつにお菓子でも焼いてくれそうな母親なのに狂気じみたことを考えているのが「母性」の母親。

なんというか、暴言を吐いた時に「えっそんなこと言っちゃうんですか?」っていう感じが欲しいのに、戸田恵梨香は結構サバサバしているイメージがあるから「言いそう〜」ってなってしまうんだよな。

じゃあ誰がいいかと聞かれると、答えに窮してしまう。

万人が納得するキャスティングなんて存在しない。

 

ただ1人だけ、この本を読み返しながら明確にイメージを持ったのは父親だけ。

なんでなのかはわからないし、別に好きな俳優でもないけれど、長谷川博己だった。

多分いつしか見た月9ドラマ「デート〜恋とはどんなものかしら〜」で演じた高等遊民の雰囲気かもしれない。